窓から眺める景色はちょうど良いテンポで後ろに飛んで行く。道路を走るトラックは抜き去るが、その向こうの新幹線には敵わない。
「ディスイズちょうどいい」というフレーズが浮かぶ。これなんだっけ。思い出せても思い出せなくてもいい。
2人がけのボックス席通路側にはおれの荷物。少しだけ申し訳ないと思いつつ、車内は今のところ空いているから。まあそりゃ隣にだれも乗ってこない方が楽だけど、別にだれかがいてもいなくてもいい。
カバンの中には旅装一式と、何冊かの文庫本。そのうち一冊は膝の上。少し読んでは窓の外、景色と頁をいったりきたり。集中力はないけど、おれはこれを読んでも読まなくてもいい。
眠くなったら寝ればいい。降りたくなったら降りればいい。なんでもいい時間。なんともいい時間。
耳慣れない地名の駅が続き、隣に座ったのはデカいデイパックを背負ったニキビの青年。旅慣れた感じで荷物を網棚にあげる。手には文庫本。チラッと表紙を見る。椎名誠。わかるぜ青年。そんなの読んだら旅に出るしかないよな。胸の奥を刺激されるが、泣いても泣かなくても、いや泣くのはダメださすがに。
窓の外はいつの間にかオレンジ、明日は晴れそうだ。晴れても晴れなくても、でなく晴れろ。友のハレの日だ。そうだ、HONDAだ。たしかショーン・レノンだ。
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